『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』:2005、アメリカ
ジオノーシスの戦いから3年、クローン戦争は激化の一途を辿っていた。そんな中、ドロイド軍を率いるのグリーヴァス将軍が、元老院の 最高議長パルパティーンを拉致するという事件が勃発した。オビ=ワンとアナキンはグリーヴァスの旗艦“インヴィジブル・ハンド”に 侵入し、パルパティーンを発見した。そこへドゥークー伯爵が現れ、オビ=ワンとアナキンは彼と戦う。
オビ=ワンが弾き飛ばされた後、アナキンはドゥークーを劣勢に追い込んだ。武器を失った敵の命を奪うことを躊躇したアナキンだが、 パルパティーンから首をはねるよう促され、それに従った。アナキンはオビ=ワンの意識を取り戻させて、パルパティーンを連れて脱出を 図る。一度はグリーヴァスに捕まったものの、オビ=ワンがライトセーバーを振るうと、すぐに敵は退却した。
無事に帰還した際、オビ=ワンは船から降りず、アナキンに「手柄はお前のものだ」と告げた。アナキンは元老院議員ベイル・オーガナたち の出迎えを受けた。ベイルたちが去った後、アナキンは待ち受けていたパドメと抱き合った。パドメはアナキンに妊娠を告げた。一目を気に するパドメに対し、アナキンは秘密の結婚生活に耐え切れないといった態度を示した。
ウータパウに到着したグリーヴァスは、シスの暗黒卿ダース・シディアスから、分離主義者のリーダーたちと会うよう命じられた。さらに シディアスは、「ドゥークーの犠牲は仕方の無いことであり、すぐに彼より若くて遥かに強い弟子が出現することを予告した。アナキンは パドメが出産中に死ぬ夢を見て、激しい不安を抱いた。かつて母が死ぬ夢を見た際、それが現実となったからだ。パドメはオビ=ワンに 相談するよう勧めるが、アナキンは「誰の力も借りない」と告げた。
アナキンはパドメのことを内緒にして、ジェダイ評議会の最長老ヨーダに「親しい人が死ぬ夢を見た」と相談する。ヨーダは「誰かに執着 するのはダークサイドへの道だ」と、アナキンに忠告した。オビ=ワンから「元老院が最高議長の権限強化を求めている」と聞かされた アナキンは、「議論の手間を省き、戦争の終結も早くなる」と賛同する意思を示した。
アナキンはパルパティーンに呼び出され、代理人としてジェダイ評議会に出席するよう指示した。評議会の長メイス・ウィンドゥと一員は 、アナキンが評議会に参加することは許可したものの、マスターの称号は与えなかった。屈辱だと抗議するアナキンだが、評議会の考えは 変わらない。オビ=ワンはアナキンに、「評議会はお前を通じて議長の動向を知りたがっている」と説明した。アナキンは議長の見張りを 依頼されるが、「背信行為だ」と激しく反発した。
アナキンはパルパティーンの元を訪れ、グリーヴァスがウータパウにいるという情報を教えられた。パルパティーンは評議会がアナキンに スパイ行為を要求したと見抜いており、「評議会は共和国の支配を狙っておる」と告げた。それから彼は、ダース・プレイガスというシス ・マスターのことを語り、「その力があれば、人を死の淵から救うことも出来る。彼の力は弟子が受け継いでいる。人を死から救う力は、 ジェダイからは学べない」と告げた。
アナキンは評議会にグリーヴァスの情報を伝え、「攻撃の指揮を自分に取らせるよう議長が言っている」と告げる。しかし評議会は「誰を 送るかは自分たちで決める」と主張し、全員一致でオビ=ワンをウータパウへ送ることに決定した。ウータパウに到着したオビ=ワンは、 グリーヴァスを見つけ出して戦う。クローン・トルーパーも、ドロイドと激しい戦闘を開始した。
アナキンはメイスから、オビ=ワンとグリーヴァスの戦闘が始まったことを議長に伝えるよう指示された。アナキンがパルパティーンの元 へ行くと、彼は「ジェダイには気を付けろ。フォースのダークサイドを学べ。そうすれば死の運命にある妻も救うことが出来る」と語る。 パルパティーンがシスの暗黒卿だと知ったアナキンは、ライトセーバーを抜いた。しかしパルパティーンは慌てず、「その怒りがお前を 強くする」と告げる。同じ頃、ウータパウではオビ=ワンがグリーヴァスを倒していた。
アナキンはメイスの元へ戻り、パルパティーンがシスの暗黒卿だったことを報告する。アナキンはパルパティーン逮捕への同行を望むが、 メイスは彼の心に迷いを感じ、留まるよう命じた。メイスはジェダイ・マスターのエージェン・コーラー、セイシー・ティン、キット・ フィストーを引き連れて、パルパティーンの元へ乗り込んだ。同行の3人は殺されるが、メイスは議長を追い込んだ。
パルパティーンはメイスとの戦いで力を奪われ、すっかり顔が変貌する。そこへアナキンが現れ、止めを刺そうとするメイスに思い留まる よう要求する。メイスがライトセーバーを振り下ろそうとした時、アナキンは彼の腕を斬り落とした。動揺するメイスはパルパティーンの 攻撃を受け、建物から転落死した。アナキンはパルパティーンに、「パドメを救うため、教えに従う」と誓った。
パルパティーンはアナキンにダース・ベイダーという名を与え、「ジェダイ全てが敵だ。根絶やしにせねばならん。聖堂にいるジェダイを 皆殺しにした後、ムスタファへー行って分離主義者のリーダー達を殺せ」と命じた。アナキンが去った後、パルパティーンはクローン・ トルーパーにオーダー66を発令した。クローン・トルーパーは一斉に反乱を起こした。各地で戦っているジェダイ・マスターは、共に敵と 戦っていたクローン・トルーパーの裏切りに遭い、次々に命を落としていった。
アナキンはジェダイ聖堂を訪れ、ウィー・マルローを始めとする多くのパダワンとソード・マスターのシン・ドローリグを皆殺しにした。 ウーキー族の元にいたヨーダ、ベイル、オビ=ワンはクローン・トルーパーの襲撃を受けるが、何とか脱出した。アナキンはパドメの元へ 戻り、「ジェダイ評議会が反乱を起こした」と告げてから、惑星ムスタファーへ向かった。
ヨーダ、オビ=ワンと合流したベイルに、特別議会への出席を求める通信が入った。ヨーダは、議会が開かれている隙に聖堂へ侵入する 作戦を立てた。パルパティーンは特別議会の壇上で、「ジェダイは一人として生かしておいてはならん」と演説した。聖堂に入ったヨーダ とオビ=ワンは、パダワンがライト・セーバーで殺されていることを知った。
ムスタファーに到着したアナキンは、ヌート・ガンレイを始めとする分離主義者のリーダーたちを皆殺しにした。パルパティーンは「共和国 を解体して銀河帝国を創設する」と宣言し、拍手喝采を浴びた。警備記録の映像を見たオビ=ワンは、アナキンがダーク・シディアスの 弟子になったことを知り、衝撃を受けた。オビ=ワンからアナキンがダークサイドに落ちたと聞かされるが、信じられない。彼女は 真実を確かめるためムスタファーへ向かうが、その旗艦には弟子を討とうとするオビ=ワンが密かに乗り込んでいた…。監督&脚本はジョージ・ルーカス、製作はリック・マッカラム、製作総指揮はジョージ・ルーカス 撮影はデヴィッド・タッターサル、 編集はロジャー・バートン&ベン・バート、美術はギャヴィン・ボケット、衣装はトリーシャ・ビガー、視覚効果監修はジョン・ノール& ロジャー・ガイエット、音楽はジョン・ウィリアムズ。
出演はユアン・マクレガー、ナタリー・ポートマン、ヘイデン・クリステンセン、イアン・マクダーミッド、サミュエル・L・ジャクソン、 ジミー・スミッツ、フランク・オズ、アンソニー・ダニエルズ、クリストファー・リー、ケイシャ・キャッスル=ヒューズ、サイラス・ カーソン、ジェイ・ラガイア、ブルース・スペンス、ウェイン・パイグラム、テムエラ・モリソン、デヴィッド・バワーズ、オリヴァー・ フォード・デイヴィス、アーメッド・ベスト、ローハン・ニコル、ジェレミー・ブロック他。
“スター・ウォーズ”シリーズのクラシック3部作(『スター・ウォーズ』『帝国の逆襲』『ジェダイの復讐』)に繋がる3部作のラスト。
前作『クローンの攻撃』から3年後の世界が舞台となっている。
オビ=ワン役のユアン・マクレガー、パドメ役のナタリー・ポートマン、 アナキン役のヘイデン・クリステンセン、パルパティーン役のイアン・マクダーミッド、メイス役のサミュエル・L・ジャクソン、ベイル 役のジミー・スミッツなど、主要なキャストは全て前作から引き続いての登場。
今さら言うまでも無いことだが、この作品のラストが、クラシック第1作(サーガでは『エピソード4/新たなる希望』)に繋がって いく。
新3部作の内、前2作に登場したキャラでクラシック3部作にも登場するのは、オビ=ワン、パルパティーン、C-3PO、R2-D2、オーウェン 、ベル。
さらに今回は、ターキン総督とチューバッカ、ダース・ベイダー、元老院議員モン・モスマが登場している。SF活劇であることを考えれば、最初に大規模なバトル・シーンから入るのは正しいのかもしれない。派手なアクションで観客をグッと 掴もうとするのは、判断として間違っていないのかもしれない。
しかし新3部作のラストであることを考えると、それが正解だったとは思えない。
もちろん、バトルはあって構わない。むしろ無ければ困るものだ。
ただ、この映画で何よりも重要なのは、アナキンがダークサイドに落ちてダース・ベイダーになるというドラマだ。だから、バトルよりも 先に、アナキンがダークサイドに落ちる予兆を見せるべきだった。
「パルパティーンが分離主義者グループに拉致されたので、アナキンはオビ=ワンと一緒に救出した」という、文章で書けばその程度で 済むことに、約30分も費やしている場合じゃないのだ。バトルの中でパルパティーンに「ドゥークーの首をはねろ」と言われて従うシーンがあるが、そんなのはダークサイドに落ちる予兆でも 何でもない。
それは、パルパティーンがダーク・シディアスだとバラす展開のための伏線に過ぎない。
ここで言う予兆とは、アナキンが周囲の親しい人物や愛する人(オビ=ワンとパドメしかいないけど)に対する猜疑心や嫉妬心、恨みや 妬みといった感情を抱くということだ。
「正当に評価されていないのではないか」とか、「裏切られているのではないか」という気持ちを抱くことだ。ジェダイの騎士だった人間がダークサイドに落ちるドラマを描くには、それなりの時間が必要となる。
「今までの2作で充分に時間は用意されていたじゃないか」と思うかもしれないが、前2作には、ダークサイドに落ちるドラマとしての 着実な道程など無かった(アナキンがバカだというのは描かれていたが)。
本作品だけでも141分の上映時間があるが、それでも不足していると感じるのは、始動が遅いからだ。
繰り返しになるが、活劇シーンから始めるより、ダークサイドに落ちるドラマから入るべきではなかったか。前作でアナキンは、「母を救えなかったのは自分に全能の力が無かったからだ。天才の自分が全能の力を得られていないのは、オビ=ワン に抑えられているからだ。だから母を救えなかったのはオビ=ワンが悪い」という無茶苦茶な論理を展開した。だから、その憎しみが今回 も持続していれば、そのままダークサイドへ落ちる流れに持って行きやすくなる。
しかし、冒頭でオビ=ワンと余裕のある掛け合いをしたり、師匠への感謝を述べたりしておりと、すっかり関係は元に戻っている。
ただ、アナキンがダークサイドに落ちるきっかけは、オビ=ワンへの憎しみや猜疑心でもなければ、評議会へ苛立ちや恨みでもないのよね (その辺りの要素を使うのがベターだと思えたが)。
じゃあ何が原因かと言うと、「パドメが死ぬ夢を見たので、彼女を救うための力を手に入れるため」というものだ。
これには、まるで説得力が無い。「母が死ぬ夢を見た時も現実になったから」という言い訳を用意しても、それでも、まだ説得力としては 弱すぎる。
アナキンがダークサイドに落ちたのは、悪の魅力に取り憑かれたとか、憎しみの鬼になったとか、嫉妬に狂ったとか、そういう感じじゃ ないのね。「愛する女を救うために変貌した」ということで、「いい人」のままでダークサイドに落ちたことにしちゃってるのね。
そこに無理がある。
ジョージ・ルーカスには、アナキンを悪の華にする覚悟が足りなかったってことなのかな。エピソード4に繋げるという至上命題があるので、そのための辻褄合わせは必要となってくる。
ただ、辻褄合わせに留まらず、それとは無関係な箇所でも、キャラの態度や行動がデタラメになっていることが色々とある。
いかに、ルーカスのシナリオに対する関心が薄かったかということだろう(もしくは、関心はあったが、単純に杜撰な出来映えになって しまっただけかも)。
アナキンは、メイスを死に追いやった時には「何てことを」と嘆く態度も示すものの、そのシーンでパルパティーンに忠誠を誓うと、 すっかり迷いは消えてしまい、子供たちまで冷徹に惨殺する。
変わり身が早いな、おい。
「愛する人を救うためには子供たちも殺すべきだ」ということで、すぐに自分の中で納得できたのかよ。
どういう論理なんだ、それは。簡単にパルパティーンの甘言に乗せられるアナキンは、あまりにもアンポンタンだが、こいつがアンポンタンなのは前作でも描写されて いたので、そこでの唐突感は無い。
急に性格が変貌しているのはパドメだ。
前作までの彼女は、誇り高くて強い意思を持った女性だったはずだが、なぜか今回は、やたらと弱々しい性格になっている。
アナキンと結婚して腑抜けになったのか、怯えて「怖い」と言っているだけ。
最後には、生きる気力を失って死んでしまう。オーダー66が発令されると、いきなりクローン・トルーパーは反乱を起こす。
そりゃクローンだから感情なんて皆無で命令に従うだけってことなんだろうけど、それにしても唐突だ。
「仲間だと思っていたが、やはり単な戦闘マシーンに過ぎなかった」という衝撃も無い。
そのための伏線がキッチリと張られていないし、裏切りシーンの演出も、感情を喚起するものではない。ヨーダはパルパティーンとのバトルに挑んだものの、まだ大して傷付いてもいないのに、さっさと退却してしまう。
オビ=ワンはアナキンに止めを刺さず、死を確認せずに立ち去ってしまう。
パドメは出産してすぐ、双子を「ルーク」「レイア」と呼ぶ。
他には、「メイスもドゥークーも弱いなあ」「ジェダイ・マスターたちも弱いなあ」「っていうかアナキンにしろオビ=ワンにしろ、場面 ごとに都合良く強さが変化しすぎ」「ボバ・フェットは登場しねえのかよ」「アナキンは改造手術を受けた後もパドメのことを思って いるのかよ」とか、そんなことを思ったりした。考えてみれば、クラシック3部作の完結後、新3部作が作られるまでに長い空白が生じたのは、ジョージ・ルーカスが映像技術的に満足 できなかったからだ。
新3部作に着手しようと決意したのは、ILMのCG技術が進化し、自分の思い描く映像が表現できるようになったと感じたからだ。
つまり、このシリーズは何よりも「映像技術」ありきで作られたモノであり、だからドラマよりも映像表現を重視する作りになっている のも、当然と言えば当然なのだろう。(観賞日:2009年2月23日)
第26回ゴールデン・ラズベリー賞
受賞:最低助演男優賞[ヘイデン・クリステンセン]
第28回スティンカーズ最悪映画賞
ノミネート:【最悪な総収益1億ドル以上の作品の脚本】部門
ノミネート:【最悪のカップル】部門[ヘイデン・クリステンセン&ナタリー・ポートマン]